新宿バルト9に『ディス/コネクト』を観に行ってきました。まずはトレイラーを見てください。

ハフポスのこの映画のレビューを読み、これはと思い、観に行った次第。舞台は米国だけれども、とても出てくるツールや使われ方がとてもリアルで、日本においてもありそうな内容で、ネットの使われ方と人間関係への影響を改めて考えないといけないなぁ、というのが観ての感想。

映画を観た後、思い返したり、考えたことのメモ(ネタバレになるところもあり)

1)映画の色んな場面にでてくる、生活に自然に溶け込むテクノロジー

映画では、日常生活にフツーにテクノロジーが溶け込んでいる。SMS・Facebookによるチャット、ウェブ上の見知らぬ誰かに悩みを告白するコミュニケーション、食事の間にスマホをいじること、リビングでティーンがiPadでネットをやっていること、クレジットカードの残高はウェブで確認、自動車で目的地に行くためにGoogle Mapにナビゲーションをしてもらうこと、ウィルスを仕込まれPC遠隔操作されてしまう人も出てくる。そしてこれらは日本でもすでにお馴染みの光景だ。

2.オンラインコミュニケーションの場面がリアル

米国の住まいは、夜は灯りを多くつけず室内を暗くしている。薄暗いベッドやリビングでFacebookでいじめた少年といじめられた少年の父親が、チャットをしている場面はとてもリアル。薄暗い中に大アップにされた顔にはディスプレイの光が反射する。その横にチャットラインが、キー入力のカタカタ…という音と、Enterキーで投稿確定するときのサウンドが、見事に合わさって流れていく。自分がまさにその書き込みをしている、その側にいるような錯覚に陥る。

3.端末のパスワードは親が把握している?それともノーパスワード?

映画では、自殺を図った息子の父親が、犯人を探すために、息子のMacを使ってFacebookにログインする。Facebookログインは、まあ、自動ログインになっているんだなぁと思うが、Macへのログインはノーパスワードなんだろうか。それともスマホ18の約束じゃないけれど、親がもしものときのために把握しているんだろうか、と。

4.バーチャルだけで終わらない、フィジカルな対決場面にも引きこまれる

とかくネットというと、まだ「相手が見えない」とか「バーチャル」って言う人もいるのだが、もはやリアルとバーチャルと区別する必要もない時代。リアルとバーチャルを常に行き来しながら日常生活を送っているのがフツーといった方がいい。しかし、最後に父親同士の殴り合いがあったり、オンライン詐欺の犯人(だと勘違い)した相手に銃をつきつけられたり、とフィジカルな場面も出てくるのは、米国的な色彩かなと。

5.ネットを使いながらも登場人物の居住地域は意外と近かった。

ネットが出てくる映画だと、遠くにいる見知らぬ人とのコミュニケーション、ワールドワイド的な展開になったりするものも結構多い。米国の映画だから、西で考えればSF、LAから、東はNYとか結構距離が離れているかと思ったりしたが、この映画の登場人物たちの居住地域はかなり近かった(ある程度の時間でクルマで行ける距離だったようだ)考えて見れば、自分たちだって結構近い人達とオンラインでやりとりしているわけだし、トラブルになるのは意外と近くにいるのかもしれない。

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原題はdisconnect。日本語タイトルで/(スラッシュ)を入れたのは、夫婦の関係が冷えきっている状態、家庭内で子どもを振り返っている状態から再びつながるーdisを切り離すー、そして再び結びつくーReunionするーというメッセージを込めてのものだろう。

映画は結末がどうなるのかは示さずに終わる。しかし、家庭内の結びつきができたからといって、ハッピーエンドにはならないだろう。あの子は意識が戻るかはわからないし、データを消去した元警官の父親とその息子は罪に問われるだろう。iPad内のデータはツールで消したけれど、誰かスクショとかで残してあるとか何か手がかりは残っているだろうから。

ネットを使っている中で、突然、自分の意図しない方向には歯車が回転する。自分としてはその時は特に問題も感じずに行った行為が、もう戻れない結果を引き起こしてしまう。自分の過去の投稿とかを思い返して、そんな内容があっただろうか、と考え、ちょっとそら恐ろしくなったりもする(これ脱線)

日本国内で、ネットモラル・危険回避のための啓発ビデオも幾つか制作されていて、それを学校の教材として利用している(某教会の社会貢献としてつくっているものとか)されているものよりも、日本のティーンや保護者にとって、はるかにリアリティあふれる映像と内容となっている。

この映画の日本版リメイクもできるのではないだろうか。そうしたらこの映画とは異なった日本独自の様相が現れるだろう。例えばツールにしてみれば、会話のやり取りはFacebookではなくLINEで、そして自撮りしてビデオコミュニケーションするにはツイキャスがでてくるとか。。

これが上映されている映画館が全国でもあまりに少ないのが残念だ。親とか学校の先生は、今のネット社会のフツーの光景として、絶対に見て欲しい映画だ。